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IMSグループ医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院 / 板橋中央総合病院附属 板橋セントラルクリニック

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トップページ 前立腺がんの根治を目指す手術支援ロボット「ダビンチ」

病院のご紹介

前立腺がんの根治を目指す
手術支援ロボット「ダビンチ」

「前立腺がん」が増えています。
全国がん登録制度に基づく新しいデータでは男性のがんの15.8%を占め、胃がんに続く第2位。
ただ比較的進行が緩やかで、早期発見できれば十分に根治が望めます。
その最強の味方となるのが、デリケートな手術を支援するロボット「ダビンチ」。
ロボット手術センター長の吉岡邦彦医師は、日本で初めてダビンチ手術を手掛けた先駆者の1人です。



医員 吉岡 邦彦
特任副院長/ロボット手術センター長/泌尿器科診療部長 吉岡 邦彦
専門分野
  • ロボット手術
専門医認定/資格等
  • 日本泌尿器学会泌尿器科専門医・指導医
  • 医学博士
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 東京医科大学泌尿器科学講座 関連教授
  • 昭和大学医学部泌尿器科学教室 関連教授
  • 慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室 講師
  • 島根大学医学部泌尿器科学講座 講師

ダビンチとは?

ダビンチはサージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートの3つの機器によって構成されています。

サージョンコンソール

操縦席に座り、3Dハイビジョンシステムによる高画質の拡大画像を見ながら、ロボットアームを遠隔操作する。術者の手の動きをコンピュータ制御で正確に反映できる

サージョンコンソール
ペイシェントカート

天板から伸びる4本のロボットアーム。1本は専用の腹腔鏡、3本は操作用鉗子類およびそのポートを制御する。最新型のXiは位置や角度の自由度がより高まった

ペイシェントカート
ビジョンカート

モニターに手術中の画像が映し出され、手術スタッフも同じ画像を共有できる

ビジョンカート

ダビンチを動画でご紹介

吉岡医師によるダビンチ紹介動画

急増する前立腺がん血液検査で早期発見を

この4月、板橋中央総合病院に最新型の手術支援ロボット「ダビンチXi」が導入されました。
先生は、黎明期の2006年からダビンチによる前立腺がんの手術=前立腺全摘除術を手掛けてこられ、
執刀と指導は2千例におよぶ第一人者とうかがいます。
前立腺がんの患者さまには心強い限りですが、まずはどのような病気なのか、基本から教えてください。
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱のすぐ下にあり、その中を尿道が通っています。 栗の実のような形と大きさで、尿道括約筋と連動し、排尿や射精をコントロールするほか、精液の一部となる前立腺液を分泌しています。
前立腺がんは尿道から離れた外周付近から発生することが多いため、初期はほとんど自覚症状がありませんので、 早期発見のために「PSA検査」をおすすめしています。 排尿困難や血尿などのトラブルに気づいたときは、腫瘍が増大・浸潤した進行がんの可能性が高くなります。
どんな検査ですか?
簡単な血液検査です。PSAは前立腺で作られるタンパク質の一種で、腫瘍や炎症があると血液中の濃度が上昇します。一般に4・0ng/mLを超えたら要注意です※。 職場や市区町村の健康診査では、多くが低料金のオプション検査を設けていますから、罹患率が増える50歳を節目にチェックしましょう。 親族に前立腺がんの既往者がいる場合はリスクが跳ね上がるので、40歳が目安になります。数値の高い方は、ぜひ専門の医療機関で精密検査を受けてください。 経直腸的超音波検査やMRI、前立腺の組織を直接採取する針生検などが行われます。 ※PSA値は加齢による変動も大きいため、年齢階層別PSA基準値という概念があり、
 50~64歳は3以上、65~69歳は3・5以上、70歳以上は4以上の方に精密検査が推奨される。
前立腺がんは、治療の選択肢がいろいろあるそうですが?
がんに直接アプローチする局所療法として手術と放射線治療があります。 前立腺がんを増悪させる男性ホルモンの分泌を薬で抑え、腫瘍を縮小させるホルモン療法と、化学療法(抗がん剤)は全身療法です。 がんの病期や進行度、悪性度、年齢、ライフスタイル、人生観などを勘案し、5年・10年後を見据えながら患者さまが納得できる治療法を選択します。 高齢で進行が遅く、悪性度も低い場合は、すぐには積極的な治療を行わず経過を見守る監視療法も選択肢の1つです。
特任副院長/ロボット手術センター長/泌尿器科診療部長 吉岡 邦彦
手術の対象となるのはどんな前立腺がんですか?
腫瘍すべてを極力切除し、根治をめざすのが手術の目的ですから、 進行度では、腫瘍が前立腺内に留まる「限局がん」と、一部の「局所進行がん」(前立腺の被膜や隣接する精嚢に浸潤がみられるもの)が対象になります。 直腸や骨盤壁などへの浸潤、離れたリンパ節や臓器、骨への転移があるケースは難しく、他の治療法を症状に応じて組み合わせるのが一般的です。
ちなみに手術の対象となる前立腺がんの場合、放射線治療を選択しても10年後の治療成績はほぼ同等といわれています。

精緻なロボット手術で根治をめざす

手術の方法もいくつかあるのですね
下腹部もしくは会陰部を切開する従来からの開腹手術と、腹腔鏡手術、腹腔鏡手術の発展形であるダビンチ手術の3つです。 切除範囲はいずれも前立腺すべてと近接する精嚢、所属リンパ節。切除後に膀胱と残った尿道をつなぎ直して終了です。
腹腔鏡手術は、お腹を5ヵ所ほど小さく切開し、腹腔鏡カメラや鉗子などの手術道具を入れて行います。 視野を確保するため炭酸ガスでお腹を膨らませるので、開腹手術と比べ出血を大幅に減らすことができるのが一番のメリットでしょう。 ほかに傷が小さく痛みが少ない、感染リスクが少ない、回復が早いなどの利点があげられます。
ダビンチ 手術風景
前立腺の位置と手術の範囲

前立腺は、膀胱の真下にある栗の実大の臓器。病巣が多発していることがあるので、前立腺すべてと隣の精嚢、すぐ近くにある所属リンパ節を取り除く

前立腺の位置と手術の範囲

ダビンチ手術について、詳しく教えてください
ダビンチは、腹腔鏡や鉗子などの手術器具を装着したロボットアーム、術者が着席してアームを遠隔操作するコンソールボックス、 手術中の画像が映し出されるモニターの3つの機器から成り立ちます。腹部の小さな切開は同じく5ヵ所。 最大の利点は細いロボットアームが体の深部に楽々と届き、コンピュータ制御で7方向360度、操作できること。 手ぶれ防止機能もあり、人間の手指はここまで自由自在に動きません。 カメラアングルも操作性が高く、術者はコンソールの拡大3D画像を確認しながら手術を進めていきます。
ダビンチは繊細な手術で実力を発揮するわけですね。
開腹手術や腹腔鏡手術でも名人上手はいらっしゃいますよ。 でもダビンチを活用すれば、ずっと多くの医師が比較的短期間で高いスキルを身に付けることができ、たくさんの患者さまに、より安全・確実な手術を提供できます。 たとえば尿道の吻合は難易度が高く、術後の尿道狭窄で再手術をする例があったのですが、ダビンチでは細かい連続縫合が可能なおかげで、めったに起こりません。
また腫瘍のとり残し(断端陽性率)が有意に少ないこともわかっています。いずれ再発率の低下につながると予測されます。
手術による合併症も低減されるのでしょうか?
前立腺の全摘に伴う合併症には尿失禁などの排尿障害や性機能障害があります。尿失禁は術後ほぼ100%の方に尿もれパッドが必要なレベルで発生。 3ヵ月で80%、1年で95%が改善するとされますが、ダビンチでは比較的軽症で、回復も早いという印象です。
性機能(勃起機能)の維持を目的とする神経温存手術の成績もダビンチは優秀とされます。
神経温存手術とは、どんな手術ですか?
前立腺をすっぽり包む被膜には、性機能に関わる神経が縦横無尽に走っています。被膜のイメージは、夏ミカンの皮の内側の白くふかふかの〝ワタ〟というところ。 ワタ=神経をギリギリ残し、中の実=前立腺を刳り抜くように剥がして取り除く繊細な手術になります。 被膜内には排尿に関わる神経も存在しますし、組織の温存は近接する外尿道括約筋や骨盤底筋を守ることにもつながる。 性機能だけでなく、排尿コントロールにも良い影響が期待できるのです。
ただし、腫瘍の位置や大きさによっては〝取り残し〟のリスクが高まりますから、事前に十分な検討が必要です。

手術と放射線治療、それぞれのメリット

ダビンチ、最強ですね。
ダビンチに限らず、手術のメリットにあげておきたいのは、切除した前立腺とリンパ節の病理検査を行える点でしょう。 腫瘍の大きさ、被膜や血管への浸潤の程度、がん細胞の形状で判断する悪性度(グリソンスコア)など、事前の検査よりずっと正確な情報が得られます。
たとえば限局がんは、PSA値、病期、グリソンスコアによって低リスク、中間リスク、高リスクの3つに分類されますが、 高リスクタイプは再発率が40%と少々やっかいながんです。
この場合は放射線治療より、術後病理検査で予後を見込んだ治療計画が立てられる手術が第一選択肢となります。
もしPSA値の上昇で局所再発が疑われた場合でも、骨盤内腔に放射線を照射し、根治をめざすことも可能。 放射線治療は同じ部位に繰り返し照射を行うことができませんから、その点でも有利といえるでしょう。
高リスクタイプは、目に見えないがん細胞が周囲に飛び散っている確率が高いのですね。
私は高リスクタイプでは、術前に6~9ヵ月間かけてホルモン療法を推奨しています。腫瘍が縮小すれば被膜外への浸潤を抑え込める可能性があるからです。 精巣の男性ホルモン産生を止める薬(LH–RHアンタゴニストなど)と、 前立腺に対する副腎男性ホルモンの影響をブロックする薬(抗アンドロゲン薬)の2種類を服用します。
板橋中央総合病院では、放射線治療も行われていますね。
IMRT(強度変調放射線治療)とサイバーナイフ(定位放射線治療)の2タイプを用意しています。 前者はリニアックという装置で放射線に強弱をつけ腫瘍の形をトレースして照射するもの、 後者はロボットアーム先端の照射口が自在に動いて腫瘍をピンポイントで狙い撃つもの。ともに周囲の正常な細胞への影響を極力抑えた放射線治療です。 高齢あるいは持病があるなどで全身麻酔下の手術の難しい方には安心でしょう。 排尿障害や性機能障害の表れ方も若干異なるので、患者さまごとに相談しながら選択します。
ダビンチ手術は、他のがんでも行われるのですか?
胃がんや直腸がん、肺がん、子宮体がんなどに適応が広がっています。当泌尿器科では態勢が整い次第、膀胱がんと腎細胞がんの手術をスタートさせる計画です。 前者は筋層浸潤がんの膀胱全摘除術。後者は腫瘍4㎝以下を対象とする腎部分切除術(腎機能温存手術)。 どちらも体の負担が少ない手技ですから、患者さまへの福音となると確信しています。

がんの早期発見のために

人間ドック

当院で行う人間ドックの日帰りコースでは、オプション検査としてPSA検査や前立腺超音波検査もご用意しています。
早期発見のためにぜひご受診ください。

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