当院は東京都板橋区にあるIMSグループの病院です。厚生労働省臨床研修指定病院 日本医療機能評価機構認定病院 東京都がん診療連携協力病院 English 中文

IMSグループ医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院 / 板橋中央総合病院附属 板橋セントラルクリニック

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診療科のご案内

腎臓内科

詳細

診療科紹介

 当院の腎臓内科が担当する疾患は、慢性腎臓病Chronic Kidney Disease:CKD、種々の腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎障害:Acute Kidney Injury: AKI、水電解質異常(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム異常、骨代謝異常精査含む)、 酸塩基平衡障害(アシドーシス、アルカローシス)、本態性または原因が他にある二次性の高血圧、耐糖能障害、糖尿病、高尿酸血症(痛風含む)、脂質異常症などの生活習慣病に関わる病態の、診断と管理全般です。
 また腎機能が著しく低下し、末期腎不全になってしまった場合には、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれか)の準備、開始を腎臓外科/移植外科と協力して当院ですべて行っています。さらに、現在すでにいずれかの腎代替治療を受けられている場合でも、これらの経過中に生じる合併症の管理治療にも対応しております。
 CKD、腎不全となる原因は、現在、糖尿病性腎臓病Diabetic kidney disease: DKDと高血圧や加齢による腎硬化症が最多です。末期腎不全を回避するためには、糖尿病や生活習慣の要因のひとつひとつをしっかり管理していくことが重要です。 また、糖尿病や高血圧だけでなく、自己免疫が関係した慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、膠原病に合併する腎炎や、感染症に関連した腎炎、薬剤性腎障害など、CKD、 腎不全の原因は非常に多岐にわたり、これらは腎臓専門医によって、早期に正しく診断され、治療方針が決定されることによって、将来の腎不全を回避できる可能性があります。我々の施設では、 エコーガイド下腎生検(年間50~60件)と腎病理専門医による病理診断を行ったうえで、治療は根拠のある報告によって綿密に作成されている国内外の最新の治療指針、ガイドラインに沿って行っています。
 また、遺伝疾患である常染色体顕性多発性のう胞腎Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKDでは、トルバプタン治療も行っています。

 当科外来では、腎機能の悪化をできるだけ抑え、末期腎不全への進行を予防・対策するとともに、必要に応じて透析・移植への準備も行っております。 腎臓内科外来の中で、『慢性腎臓病、糖尿病性腎臓病 透析予防外来』および『腎代替療法選択外来』を行っております。 この取り組みは、当科で定期的に通院され投薬を受けている患者さまだけでなく、かかりつけ医と連携しながら進めており、継続的かつ総合的な診療を大切にしています。 かかりつけ医からの紹介状をお持ちいただくと、よりスムーズに予約・受診が可能です。腎臓を守るためには、早めの受診と継続的な管理が大切です。 ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。

【慢性腎臓病、糖尿病性腎臓病 透析予防外来】
 慢性腎臓病(CKD)や糖尿病性腎臓病は、進行すると腎機能が低下し、最終的には腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)が必要になります。 この「透析予防外来」では、腎機能の悪化をできる限り遅らせ、透析導入を予防または先延ばしにすることを目的としています。 患者個々に合わせて、食事療法や生活習慣の見直し、血圧・血糖・脂質・尿酸・酸塩基バランスなどの管理、適切な薬物療法の提案と調整、腎機能の変化の早期発見と対応などを行います。 担当するのは、腎臓専門医、管理栄養士、看護師、臨床工学技士など、多職種チームでサポートいたします。患者さま一人ひとりの状態に合わせた丁寧なケアを心がけております。 近年、CKDの早期のステージから多職種で指導にあたると、将来の腎予後、心血管病の予後が良好になることがわかってきました。 早期からの多職種による介入が、将来の腎機能を守る大きな鍵になります。気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。 かかりつけ医からの紹介状をお持ちいただくと予約がスムーズです。

【腎代替療法選択外来】
 慢性腎臓病(CKD)がステージG4以降になってしまうと、生涯のうちに腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)を受ける可能性がでてきます。 腎代替療法の選択は、患者さまの生活背景や価値観、患者さま本人またはご家族のご希望などを十分に考慮した上で行うことが大切です。 どの治療法にもメリット・デメリットがあり、ご本人やご家族と一緒にじっくりと相談しながら決定していきます。 また、一度選んだ治療法であっても、状況に応じて変更や他の治療法への移行が可能です。 この「腎代替療法選択外来」は、合計で2回まで受診することができます。かかりつけ医からの紹介状をお持ちいただくと予約がスムーズです。

各診療科の医師情報の詳細につきましては、C館1階 地域医療連携室までお問い合わせくださいませ。

当院での専門的治療

外来担当医表

腎臓内科よりお知らせ
  • 腎臓内科では予約制を導入しております。詳細につきましてはご連絡ください。
午前 午後
受付時間 初診 8:00~11:00
再診 8:00~11:30
初診 12:40~16:00
再診 12:40~16:30
診療時間 8:30~12:00 14:00~17:00

診療科や担当医により診療時間が異なる場合があります。
下記の担当医表をご確認ください。

担当医表(腎臓内科)

非常勤医師

令和7年7月1日現在

午前 予約制金子 修三 予約制久田 莉奈 予約制星本 相法 予約制萩原 壮 予約制原野 真紀子 予約制村田 莉里子
腎臓内科
初診担当医
腎臓内科
初診担当医
腎臓内科
初診担当医
腎臓内科
初診担当医
腎臓内科
初診担当医
午後 予約制金子 修三 予約制今井 惠理 予約制金子 修三
腎臓内科
初診担当医
腎臓内科
初診担当医
腎臓内科
初診担当医

医師の紹介

常勤医師
腎臓内科主任部長 金子 修三
腎臓内科主任部長 金子 修三
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 医学博士
  • 日本腎臓学会腎臓専門医・指導医・評議員
  • 日本透析医学会透析専門医・指導医
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本アフェレシス学会血漿交換専門医
  • 日本移植学会移植認定医
  • 日本腎臓リハビリテーション学会腎臓リハビリテーション指導士
  • 日本腎代替療法医療専門職推進協会腎代替療法専門指導士
  • 日本腹膜透析医学会認定医
  • 臨床研修指導医
  • 厚生労働省認定難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
医長 萩原 壮
腎臓内科医長 萩原 壮
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本腎代替療法医療専門職推進協会腎代替療法専門指導士
  • 厚生労働省認定難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
医長 安野 江美
腎臓内科医長 安野 江美
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本腎臓学会腎臓専門医・指導医
  • 日本透析医学会透析専門医・指導医
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医  
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本腹膜透析医学会認定医
  • 臨床研修指導医
  • 厚生労働省認定難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
透析室長 今井 惠理
透析室長 今井 惠理
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 医学博士
  • 日本腎臓学会腎臓専門医・指導医
  • 日本透析医学会透析専門医・指導医
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本急性血液浄化学会認定指導者
  • 日本腎臓リハビリテーション学会腎臓リハビリテーション指導士
  • 日本腎代替療法医療専門職推進協会腎代替療法専門指導士
  • 厚生労働省認定難病指定医
  • 東京都身体障害者福祉法指定医(腎臓機能障害の診断)
医員 原野 真紀子
医員 原野 真紀子
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • 日本内科学会認定内科医
医員 久田 莉奈
医員 久田 莉奈
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定難病指定医
医員 星本 相法
医員 星本 相法
専門分野
  • 腎臓内科
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会認定内科医
医員 村田 莉里子
医員 村田 莉里子
専門医認定/資格等
  • 日本内科学会・日本専門医機構内科専門医

当院での専門的治療

IgA(アイジーエイ)腎症
IgA腎症とは?

 これは慢性糸球体腎炎の一つの原因で日本人に多いことで知られています。 これにかかった30%ぐらいの人がもし無治療で放置すると腎臓の働きが廃絶し透析療法や腎移植を受けないと生きていけなくなります。 原因は子供の時から成人にかけて扁桃炎を繰り返したり腸炎を繰り返したりするとIgA(アイジーエイ)という免疫を司るタンパク質(免疫グロブリン)の 質と量変化が起きることにあります。そしてこの変化したIgAが腎臓の糸球体(毛細血管の糸玉状の塊で、血液をろ過して尿のもとをつくる)を壊していくことになります。
 一方で、放置しておいても腎臓が悪くならない軽症の患者さんも少なくありません。

IgA腎症の症状とは?

 IgA腎症の特徴は血尿です。通常は目で見えないほどの潜血ですが、発熱したりすると目でもわかり尿が紅茶色、コーラ色に濃くなることがあります。

どんな人で腎臓が悪くなる?

 ではどのようなIgA腎症の方で腎臓が悪くなるのでしょう?2つのことがわかっています。
 一つは、尿にタンパクが多く出ている人です。しかもそれが1日1g以上出ていると悪くなる危険性が高いと考えられます。
 第二に、すでに腎機能の低下が見られる方です。これはeGFRという腎機能の指標で60 mL/分以下になっていることで分かります。

治療方針を決めるには腎生検が必須

 尿潜血だけでなく、尿タンパクも出ている場合は腎生検による病理検査をお勧めします。 尿タンパクの量は1日1g以上なら勿論ですが、その他の検査結果も考慮して0.5g以上でも腎生検をした方が良い場合もあります。

当院での治療方針

 まず、尿タンパク量が1g以下で腎生検でも軽度の病変だった場合は、もし血圧が130/80mmHg以上あればレニンアンギオテンシン系阻害薬という種類の血圧降下薬を服用します。 これには糸球体の病変を悪化させない効果が認められています。 さらに、SGLT2阻害薬の併用も検討します。SGLT2阻害薬は尿にブドウ糖を排出する薬剤で、もともと糖尿病の治療薬として開発された薬剤ですが、 大規模臨床試験の中で腎臓や心臓を保護する効果がわかってきました。 腎の尿細管のナトリウムとブドウ糖の再吸収の仕事を減らしたり、尿細管の仕事量と供給される血流のバランスをよくしたり、 糸球体ろ過の負担を減らしりして、多くの慢性腎臓病で腎機能を長持ちさせる効果が期待されています。
 さらに、比較的腎機能が残されている(eGFR>30 mL/分)、蛋白尿が多い、腎機能低下スピードが速い、 腎生検の結果で炎症の程度が強いか、病変の進行が予想される、などの場合では、副腎ホルモン(ステロイド)の治療を始めます。 扁桃炎を繰り返した経過があったり、上気道炎の際に血尿がでたことがあるなど、扁桃の関与が疑われる場合には、 ステロイド療法開始する前後のタイミングで扁桃腺の摘出を耳鼻科で行います。 扁桃炎が関与していて、発症からの期間が短い場合ではかなり効果的な治療法で、完全に腎炎を終息する(寛解する)ことも可能です。
 現在は種々のIgA腎症をターゲットにした治療薬の開発や治験が行われているので、今後は有望な薬剤が使用可能になってきます。

当院でのステロイド療法

 日本では大きく2種類の方法で行われていますが、当院では国際ガイドラインにのっとりステロイドの副作用を最大限少なくし、入院期間が少なくてすむ方法を採用しています。 早期にこの治療を行えば治療後6ヶ月以内に尿タンパクが消え、血尿も消える場合が多い治療法です。次の順番で行います。
①扁桃腺の摘出(しない場合もあります):当院または他院の耳鼻科にて入院(通常1週間)
②ステロイドパルス療法(入院):メチルプレドニゾロン0.5~1gを点滴で1日1回、3日間行います。これを8週間間隔で3回行います。入院は各3日間のみです。(入院が難しい場合には3日間外来に通ってもらい行うこともあります)
③パルス療法の間は外来にてプレドニン30mgを1日おきで服用します。これを3回目パルス療法終了後8週間継続します。
④トータル24週間の後、次第にプレドニンを減量し8週後に中止します。実際のプレドニンの投与量、中止の方法は、ステロイドの合併症のリスク(高齢、骨折、糖尿病、感染など)によって調整します。

ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは?

 尿にタンパクが大量(1日3.5g以上)に出て、そのために血液のタンパク質が減り、体全体が浮腫む腎臓病を総称してネフローゼ症候群とよびます。 その原因は一つではなく色々な原因があります。いずれも腎臓の糸球体という血液をろ過して尿を作る部分の異常で、 正常では尿に濾し出されないはずのタンパク質が尿に漏れてしまう病気です。
 ネフローゼの状態が慢性的に続くと、タンパクがたくさん漏れている糸球体はついには壊れてしまい元に戻らなくなります。 ある1つの糸球体が機能しなくなってしまうと結局その下流の1本の尿細管も機能しなくなってしまいます (1つの糸球体からその下流の1本の尿細管を、機能単位ネフロンを呼びます)。 そのように機能ネフロン(生存しているネフロン)数が減ってしまった状態が、いわゆる慢性腎臓病CKDです。 また、ネフローゼでは、タンパクが尿に漏れた分、肝臓が凝固因子(血液を止血する成分)をたくさん作るので、血栓が増えて、血液がドロドロになり、血栓症の合併にも注意しなければなりません。

その原因は?

 大きく2つに分けると糖尿病性か糖尿病でない(非糖尿病性)です。非糖尿病性は、免疫の異常によっておこります。

・微小変化型ネフローゼ
 子供や若い人がかかり(高齢者でも時になります)、急に顔や足がむくみ、放っておくと肺のまわりにまで水が溜まったり、腸もむくんだりして急に体調が悪くなります。 微小変化型は、症状は派手ですがステロイド療法がとてもよく効きますし、慢性の腎不全となることはありません。 ただし、まれに急性の血栓症や急性の腎不全をおこすことがあり、急性期の管理が大切です。また、慢性期は、怠薬を含め ステロイドの急速な減量、感染やアレルギーなどをきっかけで再発しやすく、治ったあとの服薬管理が重要です。

・巣状分節性糸球体硬化症
 微小変化型と似た様な発病の仕方をしますが、ステロイドがすぐに効かなかない、完全に尿タンパクが消えない、血圧が高い、腎機能が低下してくる、など微小変化とは対照的に、末期腎不全に至ってしまう厄介な病気です。 腎移植後に再発してくる疾患としても要注意です。

・膜性腎症
 発症はゆっくりで、あまり重症感がなく進行してきます。急性腎不全になることはありません。 ただし、多いタンパク尿が持続する場合には徐々に腎臓の働きが低下しCKDから腎不全になってしまうこともあります。 治療はステロイドや免疫抑制薬が有効な場合が多いですが、発症とおなじく、治療効果もゆっくり効いてきます。 自然に改善することもあるので、原則的にはネフローゼになってから免疫抑制治療を始めます。
膜性腎症が厄介なのは腎臓以外の他の臓器の病気によって引き起こされることがある点で、代表的な原因に悪性腫瘍や膠原病、薬剤性などがあります。 とくに悪性腫瘍のスクリーニングをすることが大事です。これらの原因を取り除くことでネフローゼが完治することもあります。

ネフローゼにはこれら代表的疾患以外の自己免疫的な原因、膠原病や薬剤性、血液疾患などが原因でなる場合があります。

治療方針を決めるには腎生検が必須

 こうした原因を診断し治療方針を決めるには腎生検による病理検査が必須です。(「当院における腎生検について」を参照)

当院での治療方針

 原則として国内外の最新のガイドラインに沿った治療を行いますが、個人の疾患、生活背景や価値観なども加味します。

<糖尿病が原因の場合>
 特にSGLT2阻害薬という種類の血糖降下薬で血糖コントロールを行うこと、 レニンアンギオテンシン系阻害薬という種類の血圧降下薬を服用します。 これに糖尿病性腎臓病に有効性が示されている、非ステロイド骨格ミネラルコルチコイド拮抗薬やGLP-1作動薬の併用を考慮します。 薬剤治療前提としての、食事療法、運動療法がとりわけ重要です。

<自己免疫の関与が原因の場合>
 全てのタイプで治療の基本はまず高用量ステロイド療法です。 最初にステロイドパルス療法(1日250~1000mgのメチルプレドニゾロンを3日間連続で点滴)を行う場合と行わない場合があります。 次に体重1kgあたり0.6~1mg(体重50kgなら30~50mg)、最高で60mgのプレドニンを連日内服していただきます。 これを1ヶ月程度行い尿タンパクがマイナスになったら5~10mgずつ減量していきます。40mg以下程度になるまでは原則入院で行います。 最低12ヶ月間はステロイドを服用します。微小変化型は10年間で平均3回は再発するので根気強い治療が必要です。
 ステロイドだけでは尿タンパクが減らない場合、ステロイドは効くが減らすと再発悪化してしまいステロイドが十分に減らせずステロイドの副作用 (糖尿病、骨粗しょう症など)が懸念される場合、にはにそのほかの免疫抑制薬や生物学的製剤を使用します。 当院ではシクロスポリンやシクロホスファミドを使用しますが、ウイルスや真菌などに感染するリスクや、ステロイドとは違った副作用(腎毒性、生殖臓器毒性、骨髄抑制など)があります。
 また、生物学的製剤はリツキシマブという薬剤を使用します。リツキシマブは、病因物質を含む免疫グロブリンの産生を行う前段階のB細胞という白血球を除去するために経静脈的に点滴で行います。 当院では、リツキシマブを使用する場合は、前処置と副反応の経過をみるために原則1泊入院としています。 いずれにしろ、薬剤の効果と副作用を熟知している私どもの様な病院での治療が必須です。

急速進行性糸球体腎炎 Rapidly progressive glomerulonephritis:RPGN
RPGNとは?

 慢性糸球体腎炎は年から十数年単位で比較的ゆっくり進行して腎臓が悪くなっていきます。 ところが数週から数ヶ月間単位で腎臓の働きが急速に失われ、末期腎不全に至ってしまう重症型の糸球体腎炎があります。 こうした重症型の糸球体腎炎を総称してRPGNと呼び、早期の診断と治療開始が腎予後を決めるため、なるべく早期の腎臓専門医の受診が重要です。
 RPGNの原因は、70%は抗好中球細胞質抗体anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA(アンカ)関連腎炎で高齢者に多い病気です。 ANCAとは細菌などから自分を守る白血球の1つである、好中球が持っている殺菌酵素などに対してできた自己抗体です。 このANCAが好中球を活性化したり、活性化した好中球から放出された物質が血管の壁で炎症を起こします。 全身の血管の壁で炎症を起こす可能性があるので、血管炎症候群を起こす代表的な病気でもあります。 その中でも腎臓の糸球体は血管塊であることと、血液をろ過して病原性のある物質などが濃縮する場所なので、炎症のターゲットになりやすい場所です。 5%が抗糸球体基底膜glomerular basement membrane:GBM病で、糸球体の基底膜に対する自己抗体が何らかの原因でできてしまい、急速に糸球体や肺を破壊する疾患です。 若年から高齢者のいずれでも発症します。激烈なスピードで進行し、RPGNの中でも最重症型で、疑われた場合には、診断の確定を待たずに早期に治療を開始することが極めて重要です。

ループス腎炎

 全身性エリテマトーデスsystemic lupus erythematosus:SLE(エスエルイー)という代表的な自己免疫異常があり、若年者の方が多い病気です。 いずれも、ほかの慢性糸球体腎炎と異なり悪くなるのは腎臓だけでなく、肺、関節、脳、心臓など他の多くの臓器も悪くなることが多い病気です。 自己タンパクを攻撃する多くの抗体と合わさった免疫複合体が血管の壁に沈着することで血管炎をおこします。 このため、生命や臓器のダメージを救うには強力な免疫抑制治療が必要になってきます。

治療方針を決めるのには腎生検が必要

 ANCA関連腎炎やSLE、ループス腎炎は尿検査と血液検査である程度推定が可能です。 ただ、本当にその為に腎臓が悪くなっているのか、そしてどの程度重症かを確かめるには、やはり腎生検が必要です。

当院での治療方針

 国内外の最新のガイドラインに沿った治療を原則としています。 ANCA関連腎炎では、体重1㎏あたり0.5~1mg程度の中等量~高用量ステロイドの連日内服を行います。 重症度が高い場合には、ステロイドパルス療法(1日250~1000mgのメチルプレドニゾロンを3日間連続で点滴)や血漿交換療法(血液の液体成分を入れ替え、 ANCAや炎症を引きおこす種々の病因物質を直接除去する技術)をあわせて行います。またステロイドをあわせて抗体の産生を抑える免疫抑制治療も行います。
 従来はシクロフォスファミドを使用することが多かったのですが、近年は、リツキシマブを使用することがかなり増えました。 リツキシマブにも同程度の効果が証明されたことと、シクロフォスファミドと違い、腎機能に合わせた用量調節が不要であることと、 骨髄抑制や生殖臓器障害などの副作用がないことから、使用しやすいためです。
 さらに、アバコパンという、ステロイドの代わりになる薬剤が使用可能になりました。 アバコパンの作用は、好中球が集まってきて炎症が始まるところを抑えることです。高価な薬剤でありますが、ステロイドをかなり減量でき、 ステロイドの副作用を減らすことができること、とくに腎障害が強いときに有効であること、が示されています。
 また、ANCA関連腎炎は、再発してくる病気ですので、急性期を過ぎたあとでも、外来通院が必要です。
 抗GBM病では、いかに抗GBM抗体を早く除去するかが、予後に影響しますので、診断がつく前でも、疑われた段階で、速やかに血漿交換を開始します。 血漿交換を頻回に行って、抗GBM抗体や炎症を引きおこす種々の病因物質を直接除去します。 抗GBM病でも、ステロイドとシクロフォスファミドを使用します。抗GBM病は、ANCA関連腎炎と違って再発することは稀です。
 SLE、ループス腎炎では、ステロイド(ステロイドパルス含む)、シクロフォファミド、リツキシマブ、 ヒドロキシクロロキン、タクロリムス、ミコフェノール酸 モフェチル、ベリムマブなどの免疫抑制剤や生物学的製剤の使用が認められています。 従来は、高用量のステロイドで治療を始めて、1~2か月間の入院が必要でしたが、近年はより早期から、これらの複数の薬剤を組み合わせて使用して、 ステロイドの投与量を減らしながら、外来で管理できるようになりました。 いずれにしろ、薬剤の効果と副作用を熟知している私どもの様な病院での治療が必須です。

常染色体顕性多発性嚢胞腎
autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD
ADPKDとは?

 これは慢性腎臓病となる最も多い遺伝病で常染色体顕性遺伝という遺伝形式(常染色体の上にある遺伝子の異常で、 両親からそれぞれ受け継いだ2つの遺伝子うち、どちらから1つの異常で発症する病気)、子供二人産むと一人には遺伝する確率を示します。 これが遺伝するとその3割ぐらいの人が60歳ぐらいまでには末期腎不全になると思われます。 この病気は身体中の細い管が膨らむのが特徴で、腎臓のほか肝臓、膵臓、肺、総胆管などにのう胞を作る他、大腸憩室、脳動脈瘤を作ることがあります。 いずれも良性のものですが、腎臓だけがのう胞が大きくなると正常な腎組織を圧迫してその機能が失われていくことになります。
 現在は、ステージ5の進行した腎不全になる前に、トルバプタンという薬が、のう胞の増大および腎機能低下進行にブレーキをかけることができるので投薬されるようになっています。

当院での診療

 まず、家系に腎臓病やくも膜下出血(脳動脈瘤の破裂の疑い)の人がいる場合、この病気を疑います。 診断は子供の頃からわかることもありますが、 ほかの遺伝病のように重篤な障害を起こさないので超音波検査をしないとわからないことがほとんどです。 成人になると画像検査(エコー、CT、MRI)でわかりやすくなります。診断には専門性が必要なので当院のような腎臓または泌尿器科の専門医がいる施設で行う必要があります。 担当する科は当院では腎臓内科が主に行っています。
 また、合併症の中では最も死亡率の高い脳動脈瘤を早期に発見することが大事です。 この診断が疑われた場合には必ず脳のMRA検査を行って動脈瘤の有無を調べます。 もしあった場合、直径5mm以上ですと破裂する危険が高いということになり、脳神経外科へ依頼をします。 見つからなかった場合も5年毎には調べたほうが良いでしょう。

難病指定病院である当院でのトルバプタン治療

 1年間に腎容積が5%以上大きくなる人は腎機能が低下していく危険性が大きいと考えられます。 このためトルバプタンという抗利尿ホルモンの機能をシャットアウトする薬剤の適応になります。 開始する時期はこの条件を満たしていれば早いほど良いということになります。一方で、eGFRが15~30 mL/分以下では効き目は減少してしまいます。 これを服用するには平成26年に施行された新「難病医療法」の認定を受けて費用援助を受ける必要があります。 この薬剤は尿を限りなく薄くする薬でこのため1日5Lもの排尿をすることになります。 これは結構大変なことですが、ほとんどの患者さんはこれに耐えて頑張って服用されています。
 まず、1泊2日の入院をしてこの薬剤のことと尿の出方を確認して、正しく飲水することを学びます。 副作用としては多尿(これは効果ですが)のほか、適切に飲水をしないと血液中のナトリウム濃度が高くなり危険です。 飲水はどうしても追いつかない、多尿が許容できる生活環境でないなどの問題がある場合、別の薬剤を組み合わせることで尿量を減らす選択肢もあります。
 また、肝障害も報告されているので、4週毎の検査と全例の厚労省へのデータ報告が義務付けられています。 処方資格の講習を修了した医師でないとこの薬剤の処方はできません。

慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病とは?

 慢性腎臓病とはCKDという略称でも知られていますが、いまや日本人の成人5~7人に一人がかかっている病気です。 3ヶ月以上慢性に続く腎臓病の総称で、多くの原因がありますが、多いのは糖尿病(近年DKDと呼びます)、慢性糸球体腎炎、 腎硬化症(高血圧による血管障害でおきる場合は高血圧性腎症とも呼びますが、血管の動脈硬化などを背景にした血流不足で起きる場合や、加齢など不可避な状態も含まれています)、自己免疫が原因にある慢性糸球体腎炎です。 検診で尿検査に異常があったり、腎機能の指標であるeGFRが60 ml/分未満だったり、尿異常や腎臓の形態的な異常があったりするとこのように診断されます。

GFRとは?

 GFRとは、Glomerular Filtration Rate:糸球体ろ過率のことで、1分間に腎臓の糸球体がろ過している血しょうの量(mL)を指します。 1つの糸球体とその下流の1本の尿細管が1セットで、1ネフロン単位、と呼びますので、GFRは機能している総糸球体数=総ネフロン数を反映している、というわけです。

クレアチニンとは?

 一方、クレアチニンは、筋肉の代謝物で、ほとんどが糸球体でろ過されて尿に排泄される物質です。 つまり、血液中のクレアチニンの溜まり具合をみれば、腎臓の糸球体がろ過できているかを推定できるわけです。 クレアチニンは筋肉の代謝物ですので、年齢と性別の影響を受けます(高齢であるほど、男性より女性のほうがクレアチニンの量が少ない傾向になります)。 また、脱水や感冒、動物性タンパク摂取などで、多少変動することがあります。

eGFRとは?

 eGFRとはestimated GFR 推定糸球体ろ過率のことです。同じ年齢で同じ性別の人の平均だったと仮定したとき、血液中のクレアチニンの溜まり具合から、推定されるGFRを予測式から計算して出したものです。 とうぜん、体格や筋肉量が同じ年齢で同じ性別の平均からおおきく外れたひとでは正しく推定できませんのでこの点は注意が必要です。 この場合には、シスタチンCという、筋肉量の影響を受けない物質を測定してeGFRを計算することもできます。 一般的に、医療機関や健診で普及しているeGFRはクレアチニンから計算したものを指しています。

eGFR 60 mL/分未満は必ず異常?

 いえ、そうとは言えません。このeGFRが60未満というのは、かんたんに表現すると、健康的な若者のeGFRは80-100ml/分とされていますので、それと比べて、腎臓の働きが60%未満ということです。 このため、実際には腎機能が落ちていなくてもそのように表してしまっていることも無きにしも非ずということです。 eGFRはクレアチニン値から計算した値なので、クレアチニンが変動するような状況で採血検査を受けていなかったか?再現性はあるか?長期の時間経過での変化はどうか?などを知っておくことが大切です。
 さらに大事なのは、尿検査でタンパク尿や潜血が出ていないか?超音波検査やCT検査で腎臓の形に異常がないか?を調べることです。 こうした異常がなく、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症(または痛風)がなければまず心配はないことも少なくありません。 逆にこうした異常があれば心配する必要がありますので、いちど腎臓専門医の受診をお勧めします。

慢性腎臓病CKDはなぜ怖いか?

 第一に次第に腎臓が悪くなって末期腎不全、すなわち人工透析や腎移植が必要になってしまう人がいます。 もう一つは、心不全、心筋梗塞や脳卒中などの心血管の合併症をおこす危険性が増し、それらは死亡の原因になるからです。 また、腎機能が低下してくると用量を調節したり、副作用が出やすくなったりする薬剤がありますし、 造影剤や鎮痛薬の類はさらに腎機能にダメージを与える危険が大きくなります。

当院での慢性腎臓病CKDの診療
 慢性腎臓病CKDの疑いがある場合は、軽症であってもまず当科で本当にCKDなのか、そしてその原因となる病気が隠れていないかを、尿、血液、エコー、CT、MRIなどの画像検査、腎生検による病理組織検査などでしっかりと診断いたします。 経過で免疫異常や血液疾患なども調べます。まずCKDの進行する前の早期のうちに診断を確定することが非常に大切です。 その結果、腎機能の低下があまり見られず、高血圧や脂質異常症、高尿酸血症が原因である場合は、かかりつけ医にお願いしてこれらの治療をしていただきます。 これらの治療のひとつひとつの管理が大切ですし、これらの治療においても腎機能の低下を防いでくる可能性のやる薬剤選択も大切でしょう。
 さらに、近年CKDの早期から、かかりつけ医、腎臓専門医、看護師、管理栄養士などの多職種で頻回に診療にあたることで将来の腎機能、心血管合併症を減らせることが示されています。 当院では、多職種による『CKD・糖尿病透析予防指導外来』を開設しておりますので、CKDの早期の原因診断から、多職種での予防外来をかかりつけ医とフォローと並行して受診いただくこともできます。 eGFRが30 mL/分以下のステージG4以降、尿タンパクが1g以上出ている場合、 ネフローゼ(低タンパク血症と高度尿タンパク)になってしまっている場合、免疫抑制療法が必要な場合、そして多発性嚢胞腎などの難病では当科で引き続き専門的に診療いたします。

慢性腎臓病の進行にブレーキをかけるには?

 第一に、食事療法です。eGFR 30 mL/分以上(ステージG3a/b)では、動物性タンパク質を取り過ぎないこと、塩分を制限することにつきます。 eGFR 30 mL/分以下になるとタンパク質を体重あたり0.6~0.8g以下に制限します。
 また、カリウムが多く含まれる生野菜、果物などは降圧効果、アルカリ化、食物繊維摂取、抗酸化物質摂取など生体、腎臓にとって良い方向に働きますが、 一方で血液中のカリウム(K)値が5.0 mEq/Lを超えるようなら、カリウムを制限する必要が出てきます。 当院の管理栄養士はこうした食事指導に長けていますので、定期的に栄養指導を受けていただきます。 薬物療法では、原因の治療以外にはレニンアンギオテンシン系阻害薬という降圧薬やSGLT2阻害薬の服用です。 これは単に血圧を下げたり、血糖を悪化させないだけでなく、腎臓の負担を取り除いて腎機能低下するスピードを下げてくれる大事な腎臓保護の薬です。

CKD教育入院

 当院では4日~7日程度のCKD教育入院を実施しています。この入院で食事療法を体感していただくのが主な目的ですが、血圧の日内変動を評価したり正確な腎機能を評価をしたりします。 ご自身の腎臓病についての知識を深め療養に役立てていただきます。 また近い将来透析療法が必要な方にはアクセスの作成、透析療法の見学、公費補助制度の理解など透析への準備をしていただきます。

腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)

 腎臓の働きが低下しすぎると生命の維持ができなくなる為に何らかの腎臓に替わる治療(腎代替治療)が必要になります。 それには血液透析、腹膜透析、腎移植の3つがあります。日本では毎年これらの治療を開始する人は3~4万人程度で、そのうち97%の方が血液透析で治療を受けています。 一方で腹膜透析は3%弱、腎移植は年間で2,000人弱です。
 腎臓の働きは血液中のクレアチニン値とそれから計算されるeGFR値で判断できます。 クレアチニン値が8 mg/dL以上、またはeGFRが6 ml/分以下になれば、 尿がたとえ出ていたとしても透析の開始が必要になります。 ただし、それ以前でも浮腫みが取れない、血圧が下がらない、心不全になった、貧血がよくならない、カリウム値が高い、などを理由に透析を開始することがあります。

透析を始めないとどうなりますか?

 透析を始めないと尿毒症になります。心不全を起こして、肺に水が溜まって息ができなくなったり、食欲がなくなり吐いたりして、次第に意識がなくなり錯乱状態になります。 カリウム値が高くなり致命的な不整脈が起こります。当院ではこうした症状が出る前に、透析を始めていただくようお願いしています。 尿毒症はそのままでは致死的な病状です。
 当院では24時間体制で緊急に透析を行えますが、たとえ救命しても心臓や脳に後遺症が残ったり、 入院期間が非常に長くなったり、感染症、活動性が著しく低下する、種々の合併症が起きたりと、ギリギリまで引き延ばすのには賛成できません。

血液透析

 血液透析は、週に3回(月水金または火木土)、1回4~5時間受けなければならない治療法です。 これは血管に針を刺して血液を体外に出して、血液浄化器で血液を綺麗にして体に返す作業です。 血液透析を行うには、バスキュラーアクセス(血液を取り出し、かつ、透析で綺麗にした血液を血管内に戻すための血管)を作成する手術が必要です。 通常行われるのが内シャント造設術で、前腕の静脈と動脈を繋ぎます(血流量がたくさんある動脈を、血流量が少ない静脈に分ける)、局所麻酔で行い通常1~2時間程度の手術です。 自分の血管がもともと細い、閉塞している、頻回の採血などで荒廃してしまっているなど、内シャントを作成してもうまくいかないことが予想される場合には、もっと深部の動脈と静脈を人工血管でバイパスする、人工血管植え込み手術を行うこともあります。
 ただし、内シャントや人工血管では、心臓に戻る血液が増えますので、心機能が著しく悪い場合には適しません。 この場合には、上腕動脈の表在化手術を行います。筋層内を走っている上腕動脈を皮下にも持ち上げる手術です。 上腕動脈を表在化しておくと、種々の原因で血管へのアクセス、脱血が難しくなった場合に血流をとるためのバックアップ血管としても有効です。 通常、これらの手術を行ったあと、血管の発達を待つために最低2週間は使用することができません。 すぐに透析を始めなければならない場合は太いカテーテルを頸にある静脈から挿入することを行います。 このカテーテルの最大の問題は感染を起こしやすいことで、 かつ感染すると血液に細菌が回ってしまう敗血症になる危険があることです。 ですから、なるべく早いうちに内シャントを作っておく必要があります。 この手術は日帰りか1泊程度で行えます。 この内シャントが完成していれば、透析を始めるとき1週間程度の入院ですむことになります。

腹膜透析

 透析液を血管でなく お腹の中に入れて腹膜を使って透析する方法です。始めるまでにお腹の中にカテーテルを留置しておく手術を受けておく必要があります。 カテーテルを事前に皮下に埋め込んでおき、腹膜透析を始めるときに、出口部を作成して取り出す、二段階で行う方法(SMAP法)と、カテーテルを入れて、 ドレープで1~2週間保護しておいて、カテーテルが組織に癒着するのを待ってから透析を始める方法(SPIED法)、カテーテルを入れる手術を受けてからすぐに透析を始める方法(従来法)があります。 事前にカテーテルを埋め込んでおいて癒着するのをまってから透析を開始する前二者の方が、腹膜透析開始時のトラブルが少ないといわれています。
 腹膜透析は、家において自分で操作しますので、自分の手で透析液の交換を行う方法(CAPD)と、夜間就寝中に、機械に自動で透析液を交換してもらう方法(APD)があり、生活のスタイルでこれらを組み合わせて行うこともできます。 病院への通院が月1回程度で少なくて済む利点があります。

透析の費用は?

 血液透析を1回行うと3万円弱の費用が発生します。保険3割負担だと月10万円の自己負担になってしまいます。 ですが、日本では早くから健康保険からの補助と公費(健康保険ではなくぜい金)によって負担され、所得が高い人で月2万円まで、 通常の所得の方は月1万円以内の自己負担で透析が受けられます。身体障害者1級手帳が交付されます。

透析を行うための外来通院は?

 血液透析:当院でも外来通院による透析が可能(月水金午前、夜間、火木土午前)ですが、手足が不自由になって自力で通えない方には送迎サービスが必要なので、 当院付属施設のアイタワー透析クリニックはじめとしてIMSグループの大和病院、高島平中央総合病院、IMS記念病院や、その他自宅からの通院に便利な血液透析施設を紹介します。
 また、日中働いている方には夜間透析のできる血液透析施設を紹介します。腹膜透析は当院への外来通院が可能です。月1回程度ですので、通院が可能であれば遠方からでも問題ありません。

腎臓移植

 当院では腎臓外科・移植外科で腎移植を行っています。 大部分は、夫婦間や親子間による生体腎移植ですが、日本臓器移植ネットワーク認定施設で、献腎登録も可能です。 日本では、生体腎移植のドナーになれるのは原則的には6親等以内の近親者のみです。 また、金銭授受など利益相反が生まれる場合は行いません。
 移植の成否はドナーの臓器とレシピエントの臓器がどれだけ相性がよいか(拒絶反応が起きにくいか)で決定されます。 この相性を調べる検査を組織適合性検査といいます。 これにはHLA抗原の同定とリンパ球のクロスマッチが基本となり、採血で行うことが出来ます。 もちろんクロスマッチが陰性であればほぼ問題ありませんが、クロスマッチが陽性(相性が悪い)の場合であっても、 現在では減感作療法という方法(事前に免疫抑制治療を強化しつつ、免疫グロブリンを大量に投与したり、血漿交換で抗体を除去したりする方法)で、腎移植が可能になっています。。 同じように、生体腎移植では、血液型が合わなくても問題なく行えるようになっています。
 腎移植をおこなったあとの危険性としては、拒絶反応を防ぐために使う免疫抑制薬によるものがほとんどです。 とくに移植後の3か月以内、1年以内は、拒絶反応の予防と感染予防の両面から免疫抑制薬の調整することが非常に大切ですので専門医の知識と経験が必要です。 最近ではこれらの予防法も検査、治療薬)も確立され、保険適応になったものが増えてきました。 慢性期になると、慢性腎臓病CKDと同様の管理も併せて生活習慣病の長期の移植腎の予後に影響してきます。 また、末期腎不全になった原因の病気のフォローも大切です。IgA腎症や巣状分節性糸球体硬化症といった再発する可能性が高い疾患や、原因が不明であった場合、には特に注意を払います。 また、慢性抗体関連拒絶、ポリオ―マウイルス感染症などいまだに有効な治療が確立していない移植した腎機能を廃絶させる病気も存在しています。
 一方、腎臓を提供するドナーの側の危険性ですが、長期的にもっとも問題となるのは慢性腎臓病の発症でしょう。 特に近年は、高齢者の夫婦間、親子間移植によって、ドナーが高齢化しています。 高齢者ではひとつの腎提供後は、残りのひとつの腎臓に負担がかかりますので、慢性腎臓病と同じような管理が必要になります。 このため、腎移植ドナーとしての適応があるかどうかは、腎提供後の慢性腎臓病や心血管系合併症のリスクを考慮したうえで、手術前に慎重に判断します。 腎移植のドナーにおいても、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などがあるときはその危険性が高くなるのでこれらの改善に尽くすべきでしょう。 そして定期的な健康チェック、特に血圧と尿検査が必要です。
 さて、移植に関わる費用ですが、レシピエント(受ける人)の負担は透析と同様に公費でまかなわれ、ドナーの入院費はレシピエントの公費で払われるので大きな支払いはありません。 移植希望のある方は、当院の腎移植外来を受診してください。

高血圧の原因診断

 高血圧の原因には本態性高血圧といって血圧以外には異常が見つからない場合と二次性高血圧と言って治療できる明らかな原因がある場合があります。 当院では腎臓内科がこの二次性高血圧の原因精査を行います。二次性高血圧の代表的な原因はアルドステロン症と言って、副腎という腎臓のすぐ上にあるホルモンを出す臓器から 血圧を上昇させるアルドステロン(鉱質ステロイドの一つ)が異常に分泌される病気です。この原因には副腎の腫瘍(通常は良性だが、悪性のこともある)の場合と腎臓に行く動脈が 細くなって起きる腎血管性高血圧があります。その他、同じ副腎でも糖質ステロイド(所謂ステロイド)が沢山出るクッシング病、カテコラミンが発作的に分泌される褐色細胞腫などの 原因があります。
 また、慢性糸球体腎炎や多発性嚢胞腎に伴って起きるものを腎性高血圧と呼びます。そして最近注目されているのが睡眠時無呼吸症候群による高血圧です。 当院では呼吸器外科にその専門外来があり併診して治療に当たります。
 いずれも原因によって使用する降圧薬の種類が変わりますし、腫瘍の場合はその摘出が必要になることもあります。 こうした二次性高血圧の原因を当科は精査します。特にアルドステロン症が疑われる場合は外来でのスクリーニングの後に3日間の入院での確定検査が必要になります。 精査の結果に基づいて治療法を確定し、その後の血圧のコントロールはかかりつけの内科医にお願いすることになります。

水電解質の異常

 血液中のナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)の濃度が異常に増加したり低下したりする原因を精査し治療することも当科の得意な分野です。

血清ナトリウム異常

 低ナトリウム血症は、体液全体が薄まってしまった状態であり、特に高齢者で多く、120 mEq/L以下になると脳細胞が浮腫を起こし、意識が混濁し、さらに昏睡や痙攣を起こすことになります。 原因には、腎不全、心不全、肝硬変などの大切な臓器不全が背景にある場合、抗利尿ホルモン分泌不適合症候群(脳の下垂体から、生理的または病的に抗利尿ホルモンが漏れてしまい、薄い尿が作れなくなった状態)、ナトリウム喪失性腎症、薬剤性などがあります。 その治療は原因によって異なり、治療や補正速度が適切でないとかえって危険な結果となることもあります。 逆に高ナトリウム血症は160 mE/L以上になると脳細胞が脱水を起こし昏睡、痙攣を起こします。 原因としては尿崩症という尿を濃縮できなくなる病気がありますが、喉の渇きに応じて飲水ができる人では、Na濃度の上昇は通常は起きません。

血清カリウム異常症

カリウムの値は低すぎても高すぎても危険な不整脈を引き起こします。また低いと筋肉が麻痺します。高カリウム血症は腎臓機能の低下に伴って起きることが多く、 逆に低カリウム血症は利尿薬の副作用やアルコール多飲で起きることが多いのです。
 また、内分泌の病気や、尿細管性アシドーシスという遺伝病が隠れている場合もあります。 とくに繰り返す場合には、多くの疾患を調べる必要なありますので専門医で診てもらうことをお勧めします。

血清カルシウム・リン異常症

 カルシウムとリンは共に副甲状腺ホルモンやビタミンDによって調節を受け、共にヒドロキシアパタイトを形成して骨を形成します。 カルシウムは細胞内の信号伝達を司り、リンはアデノシン三リン酸として細胞活動、特に筋細胞の収縮のためのエネルギーとなります。それぞれ副甲状腺ホルモンの過剰分泌や欠乏、 ビタミンDの欠乏や過剰(薬剤およびサルコイドーシス)、そして悪性腫瘍による骨融解によっておきます。こうした異常は骨折の原因となるだけでなく、 高カルシウム血症は多尿や急性腎障害を起こし、認知症のような症状やひどいと痙攣昏睡を引き起こします。
 ちなみに副甲状腺の腫瘍である原発性副甲状腺機能亢進症は、隠れた高血圧の原因となっていることがあります。当科は内分泌内科ではありませんが、この分野を得意としています。

浮腫(むくみ)
浮腫の原因は腎臓病?

 浮腫というと腎臓内科を思い浮かべる人は多いと思いますが、実は浮腫の原因は必ずしも腎臓病に限りませんし、すべての慢性腎臓病でむくみを起こすわけではありません。 腎臓病でむくむのはネフローゼ症候群と言って尿から1日3.5g以上大量にタンパクが漏れている場合、腎機能が低下して十分に尿が出なくなった場合です。 急性糸球体腎炎ではまぶたや顔がむくみます。

全身に起きる浮腫の原因

 全身に起きる浮腫は四肢の末梢から血液が十分に心臓に還らず、毛細血管に滞留して血管外に漏れる水分量が多いために起きるのが原因です。 その理由として腎臓で尿にタンパクが大量に漏れる(ネフローゼ症候群)ことで血液中のアルブミンが減少してしまうことがあります。 同様の原因は肝硬変でアルブミンが作られないことで起き、四肢の浮腫だけでなく腹水や胸水も溜まることになります。
 心不全ではポンプの働きが弱まるために血液を心臓に戻す力が弱まりむくんだり胸水が溜まったりします。労作時の息苦しさが特徴的です。 これらに異常がなく全身がむくむ場合として甲状腺機能低下症がありますが、押して指の跡が残らない浮腫が特徴です。

下肢など一部が浮腫む原因

 まず静脈に血液が鬱滞するために起きる浮腫で、寝て朝になると良くなっている浮腫です。この原因には下肢静脈血栓症や下肢静脈不全症があります。 座りっぱなしや立ちっぱなしでいる時間が多い人になり、血液中のD-dimerという濃度が上昇していればこれらを疑います。当院ではフットケア外来を受診してもらいます。
 治療は弾性ストッキングと抗凝固薬です。注意しないとこれは肺塞栓、すなわちエコノミークラス症候群の原因となります。 また、下大静脈が癌などで圧されてむくむ下大静脈症候群という深刻な病気もあります。この場合は寝ても改善しません。

リンパ浮腫

 これはリンパの流れが途絶するために起きるむくみで、先天性の病気もありますが多いのが乳がんの手術後などに起きる二次性のリンパ浮腫です。 フィラリアという原虫が感染するとリンパ浮腫がおき、皮膚も硬く変色して象の足のようになります。リンパ浮腫ではその部分の皮膚が白くなる特徴があります。

腫れと浮腫の違い

 浮腫では皮膚は赤くなりませんし、痛くもありません。もしそういう症状があれば炎症による腫れ(腫脹)です。細菌感染による蜂窩織炎が疑われ抗菌薬の投与が必要です。 リンパ浮腫では蜂窩織炎を合併することもあり、白い表面であったのが赤く炎症を起こします。

薬剤性の浮腫、腫脹

 アスピリンなどの消炎鎮痛薬、降圧薬(カルシウム拮抗薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬など)、ペニシリン、経口避妊薬、線溶系酵素 (血栓を溶かす薬)などがあります。 服用していて次第にひどくなる場合もありますが、アスピリンのように服用直後から急に浮腫というよりは瞼や喉が腫れて呼吸困難になることもあります。

特発性浮腫

 以上のどれにも当てはまらない原因を特発性浮腫と診断します。1日に浮腫のために1.5kg以上の体重変動があるような浮腫で、立位で増悪、臥位で軽減することが特徴です。 浮腫の機序は立位での毛細血管からの血漿成分の過度の漏出ですが、その原因はよくわかっていません。15歳〜50歳ぐらいの女性に多い病気です。 四肢がむくんだり腸管浮腫でお腹が張りますが、頸静脈は怒張しませんし胸水も貯まりません。数日間ひどくなり頂点に達すると下痢が始まって良くなる、という人もいます。
 精神的な要素がかなり影響しているように思われ、共通な精神的傾向が見られます。月経不順を伴うことが多く、視床下部からのプロラクチンや女性ホルモンの分泌不全も報告されています。
 問題は浮腫を必要以上に嫌う場合が多いことで、中にはフロセミド利尿薬を多用することで血液中のカリウムが減少して筋肉が麻痺する偽バーター症候群になったり、 神経性食思不振症になったりする場合があります。慢性的なカリウム欠乏は腎臓の線維化をおこします。 これらの方が問題です。効果的な治療はありませんが、この浮腫によって生命に危険はないことを十分に理解してもらい、利尿薬、特にフロセミド依存から離脱させることです。

当院でのステロイドと主要な免疫抑制薬
免疫抑制療法とは?

 進行していく腎臓病の中で、慢性糸球体腎炎などの免疫の異常が原因でおこっている病気ではとくに腎臓専門医による治療が大切です。 最大の武器はステロイドをはじめとした免疫抑制療法です。

腎臓病における免疫抑制療法の副作用の考え方

 こうした免疫抑制療法は多くが半年以上の長期間にわたり行う必要があります。 このため種々の副作用が想定され、場合によってはそのために、重大な合併症や命をなくす結果になってしまう可能性すらあります。 従って、その使用にあたっては最大限の予防策を講じることと、病気自身の生命への危険性とを天秤にかけて治療の強度を決める必要があります。 とくに病気の広がりが腎臓だけでおきている病気の場合、治療の強度を上げすぎる(免疫抑制を強くかけすぎる)ことで生命の危険をさらすことは避けなければなりません。 治療しなくても悪くなるのが腎臓だけならば、人工透析をすることで生きながらえることはできるからです。
 一方で、腎臓だけでなく肺や心臓、脳などが生命維持に関わる重大な臓器が同時に侵される病気では多少の副作用は覚悟して強力な治療をしないといけません。 このさじ加減は時に困難で、免疫抑制治療と人工透析の両方を熟知した、経験豊富な腎臓専門医でないとできません。

ステロイド療法の副作用とその防止策

 ステロイドは以下のような副作用が起こりうる薬です。ただ以下の予防策によりニキビや顔が丸くなること以外は完全にシャットアウトすることが可能です。 なお妊娠中でも服用できるのは主にステロイド(他にアザチオプリン、カルシニューリン阻害薬も使用可能)です。

①ウイルスや細菌などによる感染に弱くなります。特にニューモシスチス肺炎やサイトメガロ感染症は危険なため、ST合剤(バクタ™)という抗菌薬を予防的に服用します。 サイトメガロウイルスは定期的に血液検査でモニターします。

②血糖値が上昇することがあります。糖尿病の人はそれが悪化しますし、そうでない人でも一時的な糖尿病になる場合があります。 定期的に血糖値をチェックして必要なら経口の血糖降下薬や程度によってはインスリンを使用します。

③骨粗鬆症になる場合があります。このため週1回ボナロン™という効果が確かめられている骨粗鬆症治療薬を予防的に服用します。

④胃潰瘍や十二指腸潰瘍になりやすくなります。このため、ステロイド内服前に胃カメラを受けていただきます。そして胃潰瘍を予防する薬を飲んでいただきます。

⑤ニキビ、顔が丸くなる。特に若い人が悩まされる副作用です。しっかり洗顔していただくことが大事です。顔が丸くなるのを満月様顔貌(ムーンフェイス)と呼びます。 いずれもステロイドが中止されれば元に戻ります。

⑥大腿骨頭の壊死。ひどいと人工関節に変えなければならなくなります。しかし最近ではほとんど見なくなりました。 ステロイドをなるべく短く投与することや、ステロイド服用中は股関節に負担をかけない、などの予防策が功をそうしているようです。

⑦ステロイド精神病。精神的に不安になったり、うつになったりする場合があります。もともとそういう要素がある患者には発症することがありますが、 このくらいのステロイドの量では通常は起きることは多くありません。ただしステロイド投与直後は眠れなかったりする場合があります。

⑧副腎の働きが弱まる。ステロイドは副腎で作られ体の調節を行う重要なホルモンです。これを服用するとその副腎での生産が落ちます。 このために、急にステロイドを中止してはいけません。次第に投与量を減量することで副腎のステロイド生産を復活させる必要があります。

シクロスポリン、タクロリムス、ボクロスポリンの副作用とその予防

 この薬剤はいずれもカルシニューリン阻害薬と呼ばれる種類で、シクロスポリンはネフローゼ症候群に併用することが多い薬剤です。 タクロリムスはループス腎炎か腎移植に用いられるスタンダードな薬剤です。ボクロスポリンは新規の薬剤でループス腎炎のみに用いられます。 いずれもステロイドよりも副作用はむしろ少ないのですが、量が多すぎると血管障害・血流病害や尿細管障害をおこして、逆に腎臓を悪くしてしまうことが問題です。
 このために、血中の薬剤濃度を定期的に測定してこれを予防します。

シクロフォスファミド

 これは副作用が多いのですが長く使われている強力な治療薬です。代表的な副作用は骨髄抑制で好中球や血小板を減少させてしまいます。 また、大量に使用すると出血性膀胱炎を起こす他、悪性腫瘍が将来起きる危険性を高めると考えています。このため常に血液検査でモニターしながら点滴で2週間から4週間毎に投与し、 出血性膀胱炎を防ぐ薬を同時に投与します。癌の予防はできませんが、定期的ながん検診を行います。 さらに長期間使用すると、男女ともに性腺機能不全をおこすので、総投与量の管理が大切です。
 近年、同じように主に抗体の産生を抑制する効果があるリツキシマブの方が、副作用が少なく、腎機能によって用量調整の必要性がないために代わりに用いられることがかなり増えてきました。

ミコフェノール酸 モフェチル(MMF)

 この薬剤は高価で日本ではループス腎炎と腎移植以外には保険が適応されません。 海外ではネフローゼ症候群にも効果が確かめられているので残念です。 しかし、MMFの使用により、過去には高用量のステロイドに依存していた、ループス腎炎の治療が、寛解導入から維持治療までかなりやりやすくなりました。
 催奇形性があるので妊婦、その可能性のある女性には禁忌です。感染症、好中球減少症、悪性腫瘍の危険性があります。

リツキシマブ

 点滴製剤で、ANCA関連腎炎、難治性ネフローゼ症候群、そして腎移植に現在適応が広がっています。 後発品が普及したことと、保険適応が拡大されたことで、近年、急速に使用頻度が増え、これまでに同じような効果を期待して使用していたシクロフォスファミドに代わって使用されるようになりました。 副作用としては特に初回投与時にインフュージョンリアクションをいうアナフィラキシー様症状に注意する必要がありますが、投与速度をゆっくりにして、予防薬をあらかじめ使用すれば、ほぼ安全に使用できます。
 感染のリスクはシクロフォスファミドと同程度とされていますが、他のシクロフォスファミドの副作用(汎血球減少、出血性膀胱炎、性腺機能不全、将来の悪性腫瘍リスクの増加)がありません。

血漿交換療法、アフェレシス治療

 血液透析と同じ様な操作で血漿を分離し新鮮血漿やアルブミンで補充(置換)する方法です。抗凝固剤を使用するのでそれによる出血傾向やカテーテル挿入に伴う出血や感染などの合併症はありますが、安全な免疫抑制療法です。 ただし高価なのでこれが保険適用で行える病気はやはり限られています。 病気の原因となる物質(抗体、免疫複合体など)の正体がわかっていれば、無駄に血液製剤を使用することで、未知の感染症にかかったり、アレルギー反応をおこすことを避けることができる方法があります。 すなわち、二重膜ろ過法や選択的血漿交換、免疫吸着療法などの技術がこれにあたります。
 当院ではこれらをすべて行っていて、病気やその経過中に合わせた最も適した治療方法を選択します。当院の得意分野の一つです。

当院における腎生検について

 腎臓病の正確な診断と病気の予後を予測し、ステロイドや免疫抑制療法を行うかどうか判断するには腎生検による病理検査が必須です。 ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎をおこす病気は、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎/C3腎症、巣状分節性糸球体硬化症、半月体形成性糸球体腎炎と代表的な病気だけでなく、非常に多くの種類があります。 これらの病理学的な診断は、腎臓にもたらされた病因に対する、腎臓の組織の応答を形態的に見たものですが、この病理診断を経てから、ようやく実際の病気の本体を探し始める場合もあります。
 当院では針生検と言って背中から腎臓にボールペンの芯ぐらいの太さの針(専用のディスポ製)を刺して組織を採ります。 これを超音波で腎臓や針先を見ながら腎臓の端っこの浅めの場所から採取します。 所要時間は準備も含めて30分程度です。腎臓は心臓からの血流の20%程度を受けて尿をつくる非常に血流の多い臓器です。 その腎臓を針で刺しますと必ず出血しますので止血を十分にすることが大事です。
 このため検査後は、砂嚢を4時間程度まで腎臓の上に押し当てその後も翌朝8時ごろまでベッドの上で仰向けに絶対安静を取ります。 排尿は血尿を早期に発見し、尿路の閉塞を防ぐために、原則的にはカテーテルを膀胱に入れて行います。 検査そのものは局所麻酔で行いほとんど痛くないのですが、この検査後の翌朝までのベッド上での安静が皆さん辛いと言われます。 検査後も安全のために、数日間は入院で経過をみる必要があります。
通常は木曜午後2時に入院し、翌日金曜の昼頃に検査、翌朝まで絶対安静、その後安静を保って月曜から火曜日に退院となります。
 入院費用は3割負担なら8~9万円程度です。採取した病理組織は光学顕微鏡の他、蛍光抗体染色、電子顕微鏡によって精査します。 通常2週間程度で蛍光抗体染色までの結果が出るので外来でご説明することになります。

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