当院は東京都板橋区にあるIMSグループの病院です。厚生労働省臨床研修指定病院 日本医療機能評価機構認定病院 東京都がん診療連携協力病院 English 中文

IMSグループ医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院 / 板橋中央総合病院附属 板橋セントラルクリニック

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ペイン外来を受診する方の
主な疾患

「痛み」のメカニズムを知って対策を

頭痛、顔の三叉神経痛、五十肩、腰痛、膝痛、坐骨神経痛...。ペイン外来は様々な痛みに対応しています。
痛みは、病気や怪我などの異常を知らせる危険信号です。まず、痛みを感じるメカニズムを確認しておきましょう。私たちの体には、脳と全身をくまなく結ぶ神経ネットワークがあります。脳と、背骨(脊椎)のトンネルを通る脊髄が中枢神経。そこから枝分かれした末梢神経が、組織のすみずみに向かいます。
神経は双方向性で、脳からは体を動かし、内臓や循環器をコントロールする命令が送られる。末梢からは痛い、かゆい、熱いなどの感覚が脳に届きます。

痛みを感じる主体は、脳なのです。
痛みの種類も大きく3つに分けられます。1つが病気や怪我が原因の侵害受容性疼痛。2つめが、怪我や病気が治ったあとも、神経の興奮が続いて痛む神経障害性疼痛。3つめは、痛みに長く悩まされたため脳が過敏になり、痛みの原因がなくなっても、脳が痛いと感じ続ける痛覚変調性痛。
人によって1〜3が複雑に関係することがあり、急性期の治療を終え普通なら痛みがおさまる時期を過ぎてから、3ヵ月以上症状が続くと慢性疼痛と呼ばれます。

長年頭痛や腰痛を訴えている人は多いです。
痛みがあると、緊張して体が硬くなり、血流も悪くなります。すると患部に炎症性物質や、痛みの物質が溜まってしまい、ますます痛みが強くなる。負のスパイラルです。これに疲れや冷え、睡眠不足などが重なれば症状はさらに加速。イライラしたり、落ち込んだり、痛覚変調性の痛みまで誘発しかねません。

痛みが“こじれて”しまう。
ペイン外来に来る方の多くは、原因疾患が何であれ、痛みのために生活の質が低下し、困っておられます。仕事が満足にできない、買い物や旅行に行かれない。趣味を楽しむ、友人と集まる機会も減ってしまった......。
初診ではお話を伺い、治療計画をたてます。現在も怪我や病気で医療機関にかかっているなら、主治医に紹介状を書いてもらい、治療と服薬の経緯を確認する。膝や腰などの痛みで、整形外科的な検査や治療が必要と思われれば、専門の医療機関を紹介する。診察したら胸痛が心筋梗塞の前触れだった、腰痛ががんの骨転移だったという例もあるので、まず体の機能チェックは欠かせません。

その上で、オーダーメイド治療のスタートです。
患者さまが本来持つ自然治癒力を引き出し、少しずつ前向きな気持ちになってもらうことが大切。痛みを恐れ、体を動かす習慣があまりないので、少しずつ運動習慣を取り入れ筋肉をほぐします。あるいは筋肉を鍛え腰や膝にかかる体重の負担を軽減することも効果的。
近赤外線装置を用い、患部に温熱をあてて血行を改善する光線療法も好評です。これには痛みの伝達を抑える作用もあります。

痛み止めのお薬は例えば以下のようなものを使います。
急性期は、発痛物質や炎症性物質の産生を抑えるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が多く使われます。神経の興奮が続いている神経障害性疼痛には、プレガバリンや抗てんかん薬、抗不整脈薬を適宜処方します。冷えや鬱血が気になる方、イライラの強い方には、漢方薬を試すこともあります。
近年は抗うつ薬が痛みに効くこともわかってきました。実は、ヒトの体には〝鎮痛システム〞が備わっています。脳に痛みが届くとそれが発動し、脳は痛みを緩和する神経伝達物質を放出。神経ネットワークを介し、患部につながる脊髄まで送られ、末梢からの痛みの伝達を抑えます。医学用語では「下行性疼痛抑制系」と言います。 慢性疼痛の方は、この下行性抑制系が低下傾向にあります。そこで痛みを緩和する神経伝達物質=セロトニンとノルアドレナリンを増やすSNRI(デュロキセチンなど)や三環系抗うつ薬(アミノトリプチンなど)を活用します。うつ病の方にも使われますが、ペイン外来では、あくまで鎮痛作用に着目しての処方です。

近赤外線治療器 近赤外線治療器

近赤外線治療器

神経ブロック療法

神経ネットワークの中から、患者さまの症状に合わせて、痛みの伝達経路となる神経、あるいは神経周辺に局所麻酔薬などを注射する治療です。炎症が強い時は、抗炎症作用のあるステロイド薬を加えることもあります。
時間と共に麻酔は切れてしまうのですが、日数を空けながら複数回繰り返すと、神経の興奮が静まる、筋肉の緊張がほぐれて血行がよくなり、発痛物質が流れる、酸素や栄養がしっかり届くことで患部が安定。痛みが軽くなっていきます。超音波装置で神経の位置を確認し、慎重に行われます。

代表的な神経ブロックを紹介します。
  • 星状神経節ブロック:頚部にある交感神経が集まったポイントに打つ。上肢から上の痛みが対象で、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、頭痛、頸椎ねんざ、五十肩、腕や肘、指の痛みなど。
  • 硬膜外ブロック:背中側から、脊髄を覆う硬膜の外側に打ち、背骨のトンネル(硬膜外腔)に薬を注入。症状に応じ、注射の位置は首〜腰の下部まで様々。顔以外の疼痛・しびれなどの神経症状に。
  • 傍脊椎神経ブロック:神経根が椎骨の穴から出てきた部位に打つ。対象疾患は神経根ブロックと近似するが、交感神経もブロックするので、血流改善に役立つ。
  • トリガーポイント注射:トリガーポイントとは、筋肉や筋膜が固まり、痛みの発生源となる部位。漢方のツボと同様、全身にあるので症状に応じて注射をする。

脊髄と脊椎(背骨)の仕組み

脊髄と脊椎(背骨)の仕組み

星状神経節ブロックの位置

星状神経節ブロックの位置

ただ、痛みのメカニズムはとても複雑で、残念ながら痛みをすべて取り去る魔法のような治療法は見つかっていません。
ペイン外来の仕事は、一人ひとりに合わせ、痛みを極力軽減する治療を提供すること。そして患者さまが痛みを上手にコントロールし、日常生活の質を上げていけるようお手伝いをすることです。体の痛みだけでなく心の痛みも理解し、支援する伴走者でありたいと思っています。

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