当院で可能な腹腔鏡手術
総胆管結石症の治療
手術以外の治療
ラジオ波による肝腫瘍治療、内視鏡による胃腸ポリープ切除Denver shuntによる腹水治療、閉塞性黄疸に対するステント留置・チューブ留置など手術以外の治療も取り入れています
総胆管結石症治療の実際
この方は90歳というご高齢で、腹痛と発熱で他院を受診された方です。
そこで肝機能障害、黄疸、そして強い炎症とともに胆嚢結石を指摘され当院に紹介されました。
また、アミラーゼというすい臓の消化酵素も上昇しており、すい臓の炎症も合併している可能性が示唆されました。
お腹の右側に強い痛みがあり、白血球も正常上限の1.5倍以上に上昇していました。
高齢者の黄疸を伴う胆石症、そしてすい臓の炎症も合併しているとなると、命にもかかわる事態もありうる状況です。
すぐに手術という事も考えましたが、(1)総胆管やそれに連なる肝臓内の胆管にはあまり拡張はなく、胆嚢の炎症が一番の悪さの原因と考えられる (2)しかし、総胆管に石があるかどうかの確認が出来ていない (3)年齢を考えると、まず黄疸や炎症を沈めてから根本治療をした方が安全と判断し、まず胆嚢に針を刺し、胆嚢に溜まった黄疸や炎症の元になっている液体を抜くことにしました(PTGBDという治療です)。

腹部超音波でパンパンに腫れた胆嚢を確認しながら、胆嚢めがけて針を刺します。
持続的に黄疸のもととなる胆汁や炎症の原因になっている胆嚢内の膿を抜くために、左のような“ブタのしっぽ”のようなチューブを留置します。
ここからの造影では胆嚢の中にいくつかの石があることが確認できます。しかし、総胆管までは造影できませんでした。
胆嚢の中の内容を抜いてから3日ほどで炎症と黄疸は改善してきました。
この時点で胆嚢内にいれたチューブより造影剤を入れると、今度は総胆管からそれに連なる肝臓内の胆管も写ってきました。
この造影結果では総胆管内にも2個1cm弱の石()があることが確認されました。

まず内視鏡にて総胆管の石を取った後、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行う方針にしました。
内視鏡を使って総胆管の出口を切り広げ、ワイヤーで石()を掴んで引き出します。
これをESTといいます。
リアルタイムのレントゲン画像を見ながら行います。
内視鏡からのイメージは右のようになります。
総胆管の出口(乳頭部といいます)を切って広げ終わったところです。
ワイヤーで石を掴んで引き出したところです。
色が黄色いのは胆汁のためです。
総胆管の石は全部引き出しました。
まだ胆嚢は残っています。胆嚢内の石が写っています。
総胆管結石を取った2日後に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行いました。
経過は良好で3日後に退院しました。
入院したときは救急車で動けない状態でしたが、退院時には90歳という年齢とは思えないしっかりとした足取りで病院を後にしました。
左が治療後のお腹の写真です。