専門医療について

専門医療について

 当センターは臓器不全の患者さんを専門的に診療しています。特に、末期腎不全の方に必要な外科的治療の全てを行っています。

1.末期腎不全の方へ

 自分の腎臓では体を維持出来なくなるほど腎臓の機能が低下した「末期腎不全」と呼ばれる状態に至ると、失われた腎機能を代償するための「腎代替療法」が必要になります。それには次の3種類があります。
1 腎移植
2 血液透析
3 腹膜透析
当センターではこの三つの治療法に必要な外科的治療を全て行っています。

 

1)  腎臓移植

 腎移植は末期腎不全に対する唯一の根治的治療法です。そのためには腎臓を提供して下さるドナーが必要です。つまり、健常者から腎臓を頂く「生体腎移植」と、亡くなられた方から腎臓を提供して頂く腎臓を提供して頂く「献腎移植」とがあります。
「生体腎移植」のドナーとなれる方は、患者の6親等以内の血族か3親等以内の姻族で、自発的に腎提供の意志を持たれた健康な成人の方です。特に両親・兄弟姉妹・配偶者から提供を受ける場合が多くみられます。生体腎移植を希望されドナー候補がおられる方は、ドナー候補と一緒に当センターを受診してください。
「献腎移植」を受けるには、まず献腎移植の認定施設を通じて日本臓器移植ネットワークに登録することが必要です。登録できる条件は、末期腎不全のため既に透析療法を受けているか、一年以内に透析導入が必要な進行性の腎疾患に罹られた方です。献腎登録を希望される方も当センターを受診してください。
 近年は免疫抑制療法の進歩により、ドナーと血液型が違ったりドナーが配偶者であっても良好な成績を得られるようになっています。また献腎移植の成績も生体腎移植と遜色ないものになっています。
また2001年より、当センターでは生体腎移植におけるドナー腎摘術において、腹腔鏡下ドナー腎摘術を導入しています。手術創が小さいため術後の回復が早く、創部痛などの合併症も少ない低侵襲の手術です。当センターの医師は現在までに1,800例以上を施行しており、安全かつ良好な成績を収めています。

 

2) 血液透析のためのバスキュラーアクセス作製術と血管内拡張術

 血液透析を導入するには、血液浄化のために血液を脱血したり返血したりするための血管を作製する必要があります。それはvascular access(バスキュラーアクセス)と呼ばれ、以下の4種類があります。
・内シャント:前腕や肘部の動脈と静脈を吻合する手術で、脱血や返血を可能にするシャント静脈を育てるものです。
・表在化:上腕動脈を直接穿刺出来るように皮膚の直下に持ち上げる手術。
・人工血管:表在静脈が少ない場合、穿刺用の人工の血管を移植する手術。
・長期留置カテーテル:上記三つのいずれの手術も困難な方に対し、脱血と返血のためのカテーテルという管を留置する手術。
更に、内シャントや人工血管を作成しても透析で使用しているうちに、血管が細くなったり(狭搾)、血管に血栓が詰まって閉塞することがあります。それらは再手術でも治療できますが、透析と同じような管を血管に穿刺して治療する経皮的血管形成術があり、血管内の透視法によって次のような3種類の方法があります。
・経皮的血管内拡張術(PTA):レントゲンで透視しながら、シャント血管や人工血管の中にガイドワイヤーで風船のついた管(バルーンカテーテル)を挿入し、狭窄部位でそれを膨らませて血管を拡張する治療。
・炭酸ガス造影下PTA:造影剤アレルギーのある方には、生理的に体内に存在する炭酸ガスを用いた透視によるPTAを施行します。
・エコーガイド下PTA:治療対象の血管系が比較的単純なケースでは、レントゲンも造影剤も使用せず、体表エコーで確認しながらPTAを施行する方法があります。低侵襲で治療時間も短くて済みます。